はじめてのグループホーム開設では、何から準備すればいいか迷ってしまうのではないでしょうか。グループホーム開設は、順番に準備していく必要があり、準備するべきことは膨大です。ここでは、グループホーム開設に必要な準備について、順を追って解説します。
グループホームは、最終的に市町村の指定を受ける申請が必要です。この指定申請をできるのは、法人のみです。そのため、グループホーム開設準備のスタートは法人の設立となります。
法人には、株式会社や合同会社、医療法人、NPO法人などがありますが、必要なのはこれらの「法人格」。どの法人でも問題ありません。
ここでは、一般的な株式会社設立の流れをお伝えします。
社名や所在地、事業の目的、資本金、株主や役員メンバー、決算期などの基本事項を決めます。
社名は基本的には自由ですが、株式会社の場合は、社名の前か後ろに「株式会社」が入る形にしなければいけません。また、誤解を生まない社名にしましょう。
会社所在地とグループホーム所在地は別で構いません。まずは会社の所在地を決めて、法人登記後にグループホームの場所を決めるという流れで十分間に合います。また、レンタルオフィスやコワーキングスペースも利用可能です。
グループホームの指定を受けるためには、事業目的を具体的に書いておく必要があります。単に「障がい者のサポート」ではなく共同生活援助事業であることを明記しましょう。事業目的は、登記後に追加すると登録免許税がかかります。グループホーム以外でも今後予定がある事業はすべて入れておくのがおすすめです。
法人の設立費用を準備してください。定款認証手数料、収入印紙、登録免許税を合わせて、株式会社の場合は242,000円かかります。
合同会社で100,000円、一般社団法人で152,000円かかるので、費用面でもどの法人を設立するか検討するといいでしょう。
法人で使用する印鑑を作成します。法人の実印、銀行印、社印の3つがあるといいでしょう。
必ず必要なのは法人の実印だけですが、実印を銀行印や会社の認印である社印として使用するのはおすすめできませんので、それぞれ作成しておくのが一般的です。
印鑑に決まりはありませんが、実印・銀行員は丸印で社印は角印の会社が多い傾向があります。
会社の運営規定です。公証役場で認証を受けることで公的な文書となります。作り方が分からない場合も公証役場で相談できるので、問い合わせてください。
認証を受ける際に必要なのは、収入印紙代40,000円と認証の手数料52,000円です。行政書士に依頼すると電子定款を作成してくれて、印紙代が不要になります。
発起人それぞれの出資額を資本金として振り込みます。振込先は、発起人代表の個人口座です。法人口座は法人の登記後しか作成できないので、代表の個人口座に集めることになります。
払い込まれた通帳のコピーで「払込を証明する書面」を準備してください。
株式会社設立に必要な書類は、株式会社設立登記申請書、登記事項を記載した別紙、定款、発起人の決定書、役員の就任承諾書、払込を証明する書面、印鑑届出書、取締役の印鑑証明書です。
定款や払込を証明する書面など、ここまでですでに作成済みの書類もあります。数が多いので、漏れがないように注意してください。
書類を所在地の管轄法務局へ提出します。登記完了までの日数は、7~10日。窓口に聞くと、完了予定日を教えてもらえます。なお、会社の設立年月日は書類提出日です。
登記完了の際は、特に連絡が入りません。完了予定日になったら法務局に登記が完了しているか確認しましょう。
書類に不備があった場合は連絡が入ります。
無事に登記完了したら、印鑑カードの登録申請と印鑑証明書、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の取得を取得します。
これらの証明書はグループホーム開設にあたって、物件の契約や申請の際に必要です。
グループホームは、市町村による指定=許可が必要です。その許可を得るには、厚生労働省令第34号「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(第五章:認知症対応型共同生活介護)」に定められた項目のクリアが必須。人員配置、設備基準、運営基準のすべてをクリアしなければいけません。
ただし、これらの基準をクリアしていても、市町村が必要と考えるグループホーム数に足りている場合は申請を受け付けていないこともあります。グループホーム開設前に確認が必要です。
ここでは、グループホームの指定を受けるために必要な要素について、詳しくお伝えします。
グループホーム指定要件のひとつめは設備です。人がストレスなく暮らせるよう設備を整えなければいけません。その基準は明確に定められています。
スペースは、収納を除いて7.43㎡以上が必要です。そして、一人一部屋を確保しなければいけません。台所・トイレ・洗面設備・浴室は共同利用でも構いませんが、10名以内での利用になるような配置にします。10名以上が使用する配置にすると許可を受けられません。
入居者同士の交流ができる設備も必要です。各居室に近い場所に設置します。交流設備は、食堂でも問題ありません。
また、グループホームは、地域密着型サービスです。そのため、地域の住民や家族との交流ができる地域に設置するのも要件となっています。グループホームが地域から疎外された場所にあってはいけません。
小規模なら、定員4名のグループホームができます。例えば、4部屋あるファミリータイプのマンションを借りても要件クリアが可能。ワンルームマンション4部屋を借りる形でも、他の要件を満たしていれば、グループホームの許可が得られます。
次の要件は、人員です。サービス提供が無理なくできる体制を整えておく必要があります。
人員配置は、管理者、サービス管理責任者、世話人、生活支援者についてそれぞれの要件をクリアしなければいけません。
管理者は、資格要件はありませんが、常勤で1名以上が必要です。支援計画を作成するサービス管理責任者は、利用者数30人あたり1名いることが要件。他の業務との兼務は可能です。資格要件があります。生活の援助をする世話人は、利用者5名ごとに1名の配置が必要です。兼務可能で資格要件はありません。
食事や入浴、排せつのサポートなど介護を担当する生活支援者は、利用者の区分ごとに必要人数が決まっています。
外部サービス利用型指定共同生活援助の場合は生活支援者の配置は不要です。
これらの人員は、認可申請前までに基準の最低人数をそろえて、雇用契約書を取り交わしておく必要があります。
最後に、運営基準も満たさなければいけません。
運営に関しては、運営規程の作成が必要です。記載内容は、事業目的、運営方針、事業所の名称・所在地、従業員の職種、配置人数、入居定員、料金、サービスの内容、苦情対応、研修、営業時間、緊急時の対応など。グループホームを設置する市町村によって基準が違うので、記載事項の詳細は、開設したいエリアの市町村に確認してください。
設備、人員、運営の基準をクリアしたら、書類の提出をして事業者指定の申請をおこないます。
提出する書類は、要件をクリアしていることがわかる書類と法人の定款・登記簿謄本などです。
要件を証明する書類には、従業員の勤務体制及び勤務形態の一覧表、管理者の経歴書、サービス管理者の経歴書、事業所の平面図、設備・備品一覧、運営規程、利用者からの苦情を解決する為に講ずる措置の概要などがあります。
書類の数が多いので、申請の際は、すべて揃っているかしっかり確認して漏れがないように気を付けましょう。
グループホーム開設の準備では、やるべきことが膨大です。法人の立ち上げからはじまり、グループホームの必要要件をクリアして複数の書類を用意しなければいけません。
これらの手続きをすべて一人でしようとすると大変です。グループホームにはフランチャイズ展開している会社もあります。フランチャイズなら、煩雑な手続きをサポートしてくれるので、一人で準備するのと比べてとても楽です。また、費用面でのサポートや運営に関する研修を受けられるので、はじめてのグループホーム運営でも安心感があります。条件に合う物件探しからサポートしてもらえるのも大きなメリット。人員確保の相談や申請時の書類チェックなど、豊富な経験に基づくサポートをしてもらえるので、不安なくグループホーム開設を進められるでしょう。
一人で不安な場合は、フランチャイズの利用も検討してみてはいかがでしょうか。
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